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【ナイン・オールド・メン】豊かな感情表現のキャラクターで共感を誘う「フランク・トーマス」



『白雪姫』から始まり『シンデレラ』など長編カラーアニメーションが連続ヒットでスタジオが湧いていた時代、9人の主力アニメーターだった彼らは、どんな映画を作るか、どんな種類の娯楽を生み出すかということにまで影響を与えました。この9人はまだ30代でしたが、「ウォルト・ディズニー」は、重責を担う賢人という点ではルーズベルト大統領が任命した最高裁判所の9人の判事と同じだとして、「ナイン・オールド・メン」と命名しました。


↑前列左からウルフガング・ライザーマン、レス・クラーク、ウォード・キンボール、ジョン・ラウンズベリー、後方左からミルト・カール、マーク・デイヴィス、フランク・トーマス、エリック・ラーソン、オリー・ジョンストン。





■ディズニー・スピリットを伝えた伝説のアニメーター


彼らの功績として、1場面に登場する全てのキャラクターをひとりのアニメーターが描く方法を確立しました。

そうすることで、キャラクターの動きや表情をより深く表現できるようになりました。

また、新人の育成、ウォルトへの企画提案などのアニメーション部門の重要な決定のすべてを担い、ミッキーマウスの時代からウォルト亡きあとの1980年代まで、スタジオを支え続け、後進にディズニー・スピリットを伝えた伝説のアニメーターたちです。

今回は、そんな伝説のアニメーターの中のひとり、「フランク・トーマス」をご紹介いたします。





■伝説のアニメーター「フランク・トーマス」とは


1934年にディズニー・スタジオに入社し「白雪姫」、「シンデレラ」、「ピーターパン」、「ピノキオ」や「眠れる森の美女」、「ふしぎの国のアリス」、ミッキーやプルートも手掛け、長年ディズニーアニメーションの中枢を担いました。

1978年にナイン・オールド・メンの一員である親友「オリー・ジョンストン」とともに引退しました。

この2人は自宅も隣同士というくらい仲が良く、引退してから2人で本を書き出版しています。

また、フランク・トーマスは「ウォード・キンボール」たちと社内で結成したジャズバンドのピアニストでもありました。





■観客にアニメーションのキャラクターに共感してもらいたい!


フランク・トーマスはたくさんの映画に携わっていましたが、中でも「白雪姫」に出てくる重要キャラクターである「7人のこびと」が、白雪姫の死を悲しむシーンを見事に描いたのは有名な話です。

ディズニー・スタジオでは、白雪姫に取りかかる頃には、単純な喜びや悲しみを描くだけでは足りなくなり、愛情、落胆、憎悪、嫉妬、心配、恐怖といった微妙な感情を伝えなければならなくなりました。

キャラクターが大きな動きをせず、感情だけを描いたという最初の例が、白雪姫の棺のそばで泣く「7人のこびと」のシーンでした。


「こびと」たちが登場しただけで観客は笑う姿勢に入ってしまうという問題があったため、今までのアニメーションの登場人物にこれまでとは違う反応を示し、彼らの悲しみに共感してもらわなくてはならないと考え、「こびと」たちの動きを極力抑え、悲しげな目、ゆっくりしたまばたき、そして涙をいくつか描きました。

この時、観客は初めて「動くアニメーション」を観て涙を流しました。

このシーンを手掛けたのは、鋭い観察眼と抜群の記憶力を持つ「フランク・トーマス」です。

このシーンが出来上がり、今後のアニメーション映画が感情の幅を広げたと言われています。





■脇役でも印象に残るキャラクターたち


フランク・トーマスはたくさんのキャラクターを手掛けてきましたが、脇役の中でも印象に残る楽しいキャラクターを作り上げています。

例えば、「ピーターパン」のフック船長や「シンデレラ」のトレメイン夫人のような悪役、「眠れる森の美女」の3人の妖精、「ふしぎの国のアリス」のドアノブや、ハートの女王、それから無垢なピノキオです。

ここではご紹介しきれないくらい、アニメーションの原画作成、作画監督、脚本など手掛け、1989年にウォルト・ディズニー・カンパニーに並々ならぬ貢献をもたらした人物に授与される「ディズニー・レジェンド」を受賞しています。






■略歴と手掛けたキャラクターたち


フランク・トーマスの簡単な略歴、代表作、手掛けたキャラクターをご紹介いたします。

1912年9月5日アメリカ合衆国カリフォルニア州フレズノに生まれる
1934年ウォルト・ディズニー・プロダクションに入社
1937年白雪姫・・・「こびと」
1940年ピノキオ・・・「ピノキオ」
1942年バンビ・・・「バンビ」、「とんすけ」
1950年シンデレラ・・・「トレメイン夫人」
1951年ふしぎの国のアリス・・・「ハートの女王」、「ドアノブ」
1953年ピーターパン・・・「フック船長」
1955年レディ&トランプ・・・「レディ」、「トランプ」
1959年眠れる森の美女・・・「フローラ」、「フォーナ」、「メリーウェザー」1961年101匹わんちゃん・・・「パディータ」
1963年王様の剣・・・「ワート」、「リス」
1964年メリーポピンズ・・・「ペンギン」
1970年おしゃれキャット・・・「ダッチェス」、「マリー」、「トゥルーズ」1977年くまのプーさん・・・「プー」、「ピグレット」
1977年ビアンカの大冒険・・・「ビアンカ」
1978年引退1989年ディズニー・レジェンド受賞
2004年9月8日没年(92歳)






■「レディ&トランプ」スパゲティシーン


1955年、映画「レディ&トランプ」が上映されました。
このレディとトランプを描いたのも、「フランク・トーマス」です。

野良犬のトランプを、お嬢様育ちのレディを食事に誘います。場所はいつものレストランの裏口。

いつも通り残り物をもらうつもりが、可愛いレディをみたロマンチストの店主は状況を即座に察知し、料理人に「当店の自慢料理」を出すように指示します。

テーブルにはテーブルクロスやお皿も用意させます。
そしてレストランにかかせない音楽「ベラ・ノッテ」を演奏します。


人間のキャラクターにはこの状況があってもおかしくありませんが、犬が長いスパゲティをもぐもぐ食べているシーンは、魅力的で上品に見せられるだろうか。

同じスパゲティを2匹がそれぞれ端から食べていったために起こった思いがけない接触で、劇的な瞬間を試行錯誤しながら見事に仕上げ、1皿のスパゲティを上品に食べるうちに、恋に落ちるという名シーンを完成させました。







以上、フランク・トーマスについてご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

ディズニーのアニメーションや、フィギュアや絵画などを観たり飾ったりする際に、この伝説のアニメーターが動きや色、ストーリーを何年も研究して出来上がったことを思い出していただけたら幸いです。